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医療者の3ヶ条 〜「生涯書生」・「社会の優越者ではない」・「自己犠牲が伴う」〜

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 2月10日は、吉田富三(1903-1973)の誕生日であった。今年は、生誕110周年である。思えば、2003年「吉田富三生誕100周年」を、全国で展開したのが、記憶に新しい。筆者の生涯にとって、吉田富三が築いた「病理学・がん学の本流」の大いなる学びの時となった。その貴重な経験が、『がん哲学』(2004年 to be 出版)へと導かれた。吉田富三の当時の命題は、「今日の命題でもあり、将来の命題でもある」。これが「吉田富三」の現代的意義であろう。まさに「病理学者の風貌と度量と器量」の見せ所である。

 筆者は、第99回日本病理学会総会(2010年)を会長として主宰する機会が与えられた。テーマは「広々とした病理学 〜深くて簡明、重くて軽妙、情熱的で冷静〜」であった。筆者の癌研時代の恩師である菅野晴夫先生(癌研顧問)による『病理の百年を振り返って』の特別講演がなされた。「現在を的確に認識し未来を志向する」にあたって、如何に、「歴史的な財産」の学びが、必要不可欠であるのかを、実感する時であった。

 「病理学」を極めることは、「森を見て木の皮まで見る」ことであり、マクロからミクロまでの手順を踏んだ「丁寧な大局観」を獲得する「厳粛な訓練」の場でもある。「潜在的な需要の発掘」と「問題の設定」を提示し、新しい事にも自分の知らない事にも謙虚で、常に前に向かって、時代の要請感のある「新鮮なインパクト」を与る「広々とした病理学の本流」を目指したいものである。「医師は生涯書生」(吉田富三)であろう。

 2月11日(建国記念の日)午後、大阪での「メデイカルカフェあずまや」に招待された。患者、医療従事者、市民で、部屋は満員であった。通常の「がん相談」、「がんサロン」、「患者会」とは違う雰囲気の体験であった様で、患者の表情の「ほほえみ」が、大いなる印象・余韻として残った。まさに「病気であっても、病人」ではない「人間の尊厳」に触れる「涙の井戸を汲み上げる生命の洗濯場」の様相と思えた。「医師は社会の優越者ではない」・「医業には自己犠牲が伴う」(吉田富三)の再認識の貴重な時となった。

 「カフェ」に引き続き、大阪市内にある「上智大学グリーフケア研究所」で、「桃山学院大学地域連携研究プロジェクト」主催による講演「立ち戻るべき原点 〜がん哲学外来の役割〜」の機会が与えられた。東京、富山、岡山からの参加者もあり、会場から多数の質問があり、本当に充実した一時であった。今後、「大きなうねり」となる予感がする。


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